
何代にも渡る生まれ変わりを通じて人間とは何かを問うていて、数多くのテーマが難解なパズルのように織り込まれた物語になっている。
ただ、全て生まれ変わりの物語かと思いきや、単純に前のエピソードの30年後だったりしてつながりを理解するのに一瞬戸惑う。
その上、単に重要なセリフをその俳優に言わせたいがために生まれ変わりとは違う役をやらせていたりするもんだから分かり難いことこの上ない。
特殊メークで主要な役者に何役も演じさせているのでそれが誰だか見極めるのも、彼の前世はどんなだったかなどと思い出すのが余計に難しくなるだけで疲れるのは厄介だった。
物語が切り替わるときに二つのエピソードにまたがって何度となく重要なテーマが語られるが、そのテーマ自体は示唆と含蓄に富んでいて、物語に別の奥行きを与えている。
しかしながら、テーマをセリフでそのまま説明しているだけというのはあまりにも安直で興ざめだ。
「強い信念をもつ者にとって物事の塀を超えることは容易である。」
「弱い者の肉を強いものが食らう」
「言葉や行動が時代を超える魂を形作る」
「いのちは自分のものではない、子宮から墓場まで人は他者とつながる過去も現在もすべての罪が、あらゆる善意が、未来をつくる。」
映画の中では、ほうき星の形のアザを持つキーパーソンたちが信念を持ち、運命を変えていく力を持った人間として描かれている。
その一方、彼らのすぐ傍らには世代を超えて常に同じ運命をたどる人間も対照的に登場しており、時代を超えて同じ信念で生きることも、自ら戦って大きな流れを変えることも、そのどちらを選ぶことも人間は出来ると言っている。
6つの物語が同時に盛り上がりを見せてくれたりすると見ている側としても非常に感激したと思うのだが、今一つ盛り上がりきらない場面が繰り返されて何とも欲求不満が残る展開だった。
壮大な哲学的・宗教的なテーマが、数多くの言葉とシークエンスで語られるので、映画を見ているときにはついていくだけで精いっぱいだが、鑑賞後に振り返ると非常に含蓄に満ちた物語に何度となく思いをめぐらさずにはいられなくなる。
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