怒り ★★★*☆

怒り整形して逃亡した殺人犯の話を軸に3つのエピソードが語られる。

今の日本のトップクラスの俳優陣が集結しているだけあって出演者を見ているだけで引き込まれるが、3つのエピソードのつなぎ方がブツ切れで、せっかくの緊張感が消え、間延びしているように感じる。

俳優陣がオーバースペック? のせいか、逆に、演出や編集/脚本が追い付いていないのではないか。

さすがに主役級ばかり集めてるだけあって、それぞれのエピソードは印象が残るのだが、映画としてはまとまりがついていない。

これまで日本映画でほとんど描かれてこなかった妻夫木x綾野の性的マイノリティの物語、森山x広瀬の沖縄の米兵の物語、渡辺/松山x宮崎の頭の弱い風俗嬢あがりの女性の物語。

それぞれが出口の見えない問題を抱え、閉塞感の中で生きていくさまは息もつまりそうな思いに駆られる。
 
3つのエピソードに共通の裏のテーマである人を信じることについては、自分自身を信じること、他人を信じることの両方が成り立ってないと”信じること”にはならないことに気づかされる。

森山にしても、宮崎にしても自分を信じることができなかったからこそ、結局他人をも信じることができなかった。

渡辺、妻夫木は自分は最愛の人を信じているつもりだったにもかかわらず、追い込まれてその人のことをまったく信じてあげることが出来なかったことを悟る。

自分も他人も信じられずに自分の殻の中に閉じこもった犯人は、身動きの取れない状況にこらえきれない怒りを膨らませていたことは想像に難くないが、殺人の動機としてよく理解できなかったのが残念だ。

また、たとえ犯人が殺されてしまっても、それで”一件落着”と納得できるわけではない。

豪華な俳優陣だが、自分としては広瀬すずの頑張りと新人の佐久本宝、あとオーラを消した渡辺謙に惹かれた。

宮崎あおい、綾野剛、松山ケンイチ、この辺りはどんなに難しい役でも、演じて見せるんだろうと簡単に想像出来る。

今までニコニコしたアイドル路線まっしぐらの広瀬すずがあれを演ったのが驚き。

広瀬すずを起用することで、沖縄の米兵による悪行について一層、嫌悪感が強くなる効果があったんじゃないか。

ただ、この映画も結局は日本人向けだ。

渡辺謙しか知らない外人の前で上映して我々が受けた衝撃と同じインパクトがあるとは思えない。

他の作品の妻夫木聡や広瀬すずを知っているからこその衝撃だ。

しかも、外国ではゲイもレイプも映画の数段上のレベルでもっと身近にあふれているんじゃないだろうか。




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