100歳の華麗なる冒険 ★★★*☆

100歳の華麗なる冒険老人ホームから逃げ出した100歳の老人は、独学で爆弾の作り方を学び、爆弾専門家として20世紀の世界史の重大シーンに立ち会ってきた人だった。

スペインのフランコをはじめ、第二次世界大戦から東西冷戦の終結まで主要なイベントにかかわってきたということは、この20世紀が爆弾の時代だったということを示している。

主人公が途中、精神病院に入れられて去勢されるシーンがあるが、これも大砲ではなく20世紀は爆弾の時代ということのメタファーだ。

時に収まりどころを失った勃起した男根をも意味する"European Cannon"という言葉がある。

"European Cannon"(ヨーロッパの大砲)は、一方で新大陸やアフリカを制した欧州の武力を意味するが、そういう意味で20世紀は一方的に欧州の白人が未開人を統治するのではなく、ボクシングのように互いに爆弾でなぐり合う時代になったということでもある。

冷戦時代には二重スパイになった主人公が、東西両者の顔を立てるために不要になったごみ情報を要求して、東西互いにごみ情報をやり取りし、これを争ってスパイたちが殺し合いをするところなど、これまで散々描かれてきたスパイ像に対する強烈なブラックコメディになっている。

100歳の爺さんのとぼけっぷりが妙に楽しいスウエーデンの痛快作品。


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フューリー ★★★★☆

フューリー実際の戦車を使用した手に汗握る戦車戦と砲弾飛び交う戦場のその場にいるかのような臨場感がすごい。

また、第二次世界大戦末期の疲れ果てた兵士たちと、人間を人間として扱わない狂気じみた雰囲気、死んだ戦士は即モノであるかの扱いをするところなど残忍さがえげつないほどにリアルに描かれている。

しかしながら、描かれているテーマもストーリーも目新しいところは全くない。

あまりにもありきたりな話だけにここ最近しばらくなかったこともあって逆に新鮮さを感じたほどだ。

細かいところを言えば突っ込みどころ満載なのだが、ブラピ演じる軍曹のあまりの潔さがかえって長く心に残った。

生き残るうえでの、あれこれと小賢しい手段を見せる最近の物語とは違い、神をも見捨てたかと思えるほどの極限の状況の中で運命を真正面に受け止め、立ち向かっていく姿は、胸に重く響いた。




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ゴーン・ガール ★★★☆☆

ゴーン・ガールタイトルの「GONE GIRL」は、行ってしまった女、即ち”失踪した女”だが、日本語的に”イカれた女”という意味でとらえると面白い。

そもそも、ここまで知能が高く、実行力のある人間がなぜいともたやすく没落するのか。

この人は簡単なことをわざと難しくしていないだろうか。

わざわざ窮地に陥って、それを自らの頭脳と行動で解決することにしか自己実現の姿を見いだせないのだ。

もっとシンプルで容易に成功を実現できる能力がありながらも、無意識にそのような方法をとる、とらざるを得ないところがイカれた女のイカれたる所以だ。

2000年前後に流行したどんでん返し映画のパターンだが、取り立てて驚くような展開でもない。

いわんやデヴィッド・フィンチャーの旧作「ファイト・クラブ」を初めて見たときの衝撃に及ぶべくもない。

この手の映画がはやった時期から観客も一回りしているということで、新しい観客向けに作ったんだろうな。

ということは、しばらく、こういう映画が続くかもということか。

そういえば、スリラーの古典「氷の微笑」「サイコ」「キャリー」を彷彿とさせるシーンが挟み込まれていて面白かった。




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寄生獣 ★★★*☆

寄生獣
山崎貴監督の作品はCGが主役になってドラマがイマイチという印象が強かったが、今回はドラマもちゃんと描かれている。

染谷将太の演技がこの映画をより魅力的なものにしているとも言える。

日本テレビが関わったヒット作としては「デスノート」が記憶に新しいが、同様の良作になっていると思う。

高い知能と運動能力を持ちながら、自分たちの存在意義を見出せずにいる寄生獣。

あえてそのようにしている生物だとしたらその理由は何だろうか。

彼らは宇宙から来たのではなく、海から来た。

人間のことを地球に寄生する害獣のような言いようをするのだが、利己的で繁殖能力はない。

つまり、その個体のためだけに利己的に生き、人間を食らう。

一見、地球のために人間を駆除する存在かとの印象を受けるが、それだけのために、繁殖能力のないこれほどの高度な知的生命体は必要だろうか。

これほどの高度な知性を持ちながらなぜ、人間に寄生し、人間を食うだけの存在なのだろうか。

そもそも原作は未読なのだが、原作ではこのあたりも触れられているということか。

いずれにせよ、興味深い多くの謎をはらみながら、来年4月に公開の続編に期待が膨らむ秀作になっている。




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6才のボクが、大人になるまで。 ★★★☆☆

6才のぼくが大人になるまで12年をかけて実際に俳優たちの子供から大人になるまでの成長を描いた作品。

脚本が全くなくて子供たちの成長に合わせたドキュメンタリという訳でもなく、ちゃんと脚本があったと思うのだが、それならもう少し12年かけてしかできない仕掛けを組み込んでくれていてもよかったように思う。

9.11テロとイラク戦争というあまりにも大きなイベントを無視することなく反映させているのはそういう意味でお見事。

子供だけでなく、常に子供と表裏一体の母親の人生も浮かび上がらせているのもすばらしい。

でも、それ以外はあまりにも淡々と時間にそって生活を追うだけに終始しているように思えてならない。

一方で、俳優たちと共にこの映画の主役は、疑うことなく「時間」。

時間そのものを遡上にあげることなく進んでいながら、最後にセリフで一瞬の意味を問うというのは、とってつけたような感じがしてなんとも興ざめだ。



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