オーデュボンの祈り ★★☆☆☆

『オーデュボンの祈り』 伊坂 幸太郎 新潮文庫 2003/11

この小説独特の世界観には今ひとつついていけなかった。

時々ハッとするような示唆に富んだエピソードも登場するのだが、単発で、全体としてはパッとしない。

読みながら、先日見た映画「アヒルと鴨のコインロッカー」の独特な雰囲気はこういうことか、とこの作家の小説を初めて読んで分かったような気がした。

あとがきにもあるが、シュールである。
これがデビュー作ということにも驚かされた。

他の作品で何度も直木賞候補に挙がっているということなので、これに懲りず、他の作品も読んでみようと思う。


テーマ: ブックレビュー | ジャンル: 小説・文学

Category: 小説

ヒートアイランド ★★★★☆

『ヒートアイランド』 垣根 涼介著、文春文庫、 2004

「ワイルド・ソウル」と同様すごい疾走感でぐいぐいと物語の世界に引き込まれる。

そしてクライマックスの、読んでいる側の神経まですり減らされる緊張感。

下手に説明するよりもとにかく読んで見てと言いたくなる快作だ。





なお、ミニシアター系で公開の映画化が進んでいるとのこと。


テーマ: ブックレビュー | ジャンル: 小説・文学

Category: 小説

月の扉 ★★☆☆☆

『月の扉』 石持浅海著 光文社文庫 2006

ハイジャックされた飛行機の中で誰も予想しなかった別の殺人事件が起こる。

このプロットはいいのだが、その対応があまりにも緊張感が感じられない。

240人もの乗客の人質を脇へおいやって、ひたすら殺人事件の謎解きを犯人たちが行うなんてありえない。

時間がないはずの場面で長い台詞の会話を交わしてみたり。

何でそんな対応が可能になるかの説明はあるが、説得力はなかった。

最後の師匠の態度もそれでいいんだろうか。

師匠の人物描画もこの人物の目指すところが大きすぎて描きあぐねているような気がした。


「このミステリーがすごい」の8位獲得作品。


テーマ: ブックレビュー | ジャンル: 小説・文学

Category: 小説

憑神 ★★*☆☆

『憑神』 浅田 次郎 著 新潮社文庫、2005

まさに幕末~大政奉還の江戸が舞台となった小説。

現代では、大きな時代の変化に翻弄されるとき、大きな価値観の変化に翻弄されるとき、新たな流れにいかに上手く乗っていくかが処世術の一つとして取り上げられているような気がする。

それに対してこの小説は、今まで培った自分自身の価値観を貫き通して生きていくことを一つのアンチテーゼとして取り上げているように感じた。

いかに変化前の時代で不遇を囲おうとも、所詮はその時代の価値観でしか生きられないということを述べているようであり、その不器用さの哀しさをつづっているようでもある。

変化前の時代で上手く世を渡れなかった者は、新たな時代でも同様であると語っている様にも。


テーマ: ブックレビュー | ジャンル: 小説・文学

Category: 小説

蒼穹の昴 ★★★★☆












『蒼穹の昴』 浅田次郎著、2004、講談社文庫

長編の小説ではあるが、話の構成が巧みで読み手を飽きさせない。

また、著者の見せ場である歴史の新解釈も興味深い。

特に物語が急展開し始める後半の盛り上がりは手に汗握る。

なのに、最後の最後が小さくまとめすぎな気がしてならない。
物語の最初から壮大な物語を丁寧に紡ぎあげたのに何だかちょっと拍子抜けしてしまった。
もったいない。



テーマ: ブックレビュー | ジャンル: 小説・文学

Category: 小説